王子様の未来―劇団天華・澤村丞弥さんの誕生日に寄せて―

背景にバラを飛ばしても違和感のない役者さん選手権第一位(個人調べ)。劇団天華の花形・澤村丞弥さんは、まるで少女マンガから抜け出してきたような方だ。


≪丞弥まつり≫からの1枚

美形と一口に言っても、好みは千差万別。目力強力なキツめの麗人もいれば、春の陽だまりのごときエクボふんわり美人もいるわけで。
でも丞弥さんの癖のない美しさは、好みの壁をするんと抜けて、ほとんどの人が「キレイな人ね」と頷けるであろう涼しさがある。

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女形のきらびやかな姫っぷり!

さらに声も甘やか。踊りもしなやか。そんでもって人に接するときは丁寧で優しく、笑顔を絶やさず…誰に対してもニコッとして「いつもありがとうございます!」
わわ、リアル王子様だ~(;’∀’)
昨年のバレンタインデーの公演では、さすがと言うべきか、両手いっぱいの紙袋にチョコをもらっていらした。

でも。大人気の花形さんは単に“きれいな役者さん”に留まらないようだ、と遅ればせながら気がつくことができたのは昨年7月。個人舞踊【新無法松の一生】を観てからだ。イントロが流れたとき、え、丞弥さんが無法松!と意外な選曲に驚かされた。

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“啖呵切るより手のほうが早い 無法松よと なじらばなじれ”

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“おいさんはのぉ ぼんぼんがこぎゃん小まかぁとっから 育てちきたっとぞ”

この日初めて踊られたそう。容貌がきれいすぎて、武骨な車夫に似合っていたかというと、ややぎこちなさもあったけれど。
むしろ印象に残ったのは、無法松というキャラクターの形を素直に体に乗っけようとしていたこと。顔を悲しげに歪ませて、ぼんぼんに手を伸ばす姿。役へのまっすぐな向き合い方が清々しい余韻を残した。

以来、ちょくちょく丞弥さんの表現の楽しさに出会えている。
たとえば【浪花恋しぐれ】。

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“泣きはしません つらくとも いつか中座の華になる”

放蕩家の噺家・桂春団治を歌った歌。多くの役者さんが春団治になりきって、荒々しく怒鳴ったり酒をあおる振りをするけれど。丞弥さんはスッと膝をついて客席にお辞儀をし、“これから落語を一席”という場面を作っていた。

鮮やかだったのが【津軽平野】。面を使って、歌の中に出てくる“親父(おどう)”と息子の二役を見せる。

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“津軽平野に雪降る頃はヨー 親父(おどう)ひとりで出稼ぎ仕度”

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“夢もしばれる 吹雪の夜更け”

持ち味だなー…と思わされるのは、かなり具象化された世界観にも関わらず、くどく感じないこと。「澤村丞弥のステージでした」とアナウンスされた後は、常々、涼風が吹いたような爽やかさが場に残っている。踊りが素直に曲に溶けていくのだ。
多分、カッコよく見せてやろうとか、上手く見せようみたいな自意識が薄い役者さんなのじゃないかと思う。

思えば、芝居にもカッコつけがない。老人役なら老人らしく、悪役なら悪人らしく、本質をとらえようと丁寧になぞっていかれる。
丞弥さんの持ち役で私が好きなのは、『丸髷芸者』の老いたお義父さん役だ。千夜座長演じる元芸者の嫁を非常に嫌っているが、最後、出ていく嫁にお義父さんは自ら下駄を揃える。そして自分の誤解ゆえの意地悪を詫びる。何度も何度も頭を下げ、腰を曲げて。
「この場面で涙がこぼれました」
観劇に誘った友人が言っていた。

丞弥さん主演芝居でいえば『遊侠三代』。役どころはゴリゴリのやくざの親分・川北長治!
終盤のワンシーンが印象的だ。長治は、子分の長吉(神龍副座長)の亡骸と、兄(千夜座長)の亡骸に挟まれる。両方を交互に見て口元に手をやり、かすかに息を飲む丞弥さんの横顔。
――どうしよう、と声が聞こえるようだった。
“親分”と“弟”の立場の狭間で揺れる心。この長治は青年のみずみずしさだ。ほっそりした甘い顔立ちに川北長治というキャラクターを乗せたら、こんな風になるのかと新鮮だった。

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千夜座長との相舞踊【お島千太郎】。千夜さんお島に「世話女房に」と告げる、丞弥さん千太郎の清冽さが光る。

いつもきれいに、爽やかに。その上でちゃんと“役らしい”。だから、花形さんはこんなにも愛されるのかもしれない。
「丞弥っ!」
≪丞弥まつり≫の日、客席から一斉にかかるハンチョウを聞きながら思った。

きっと30代、40代と歳を重ねられるにつれて面白くなる役者さんだ。表現者として、より滋味深く。
けれど何年経っても舞台に吹いているのは爽風なんだろうな。優しい笑顔に皺が増える頃になっても、客席から黄色い声が飛んでいるのだろうな。

…と、ずいぶん先走ってしまった。本日2/20、花形は30歳を迎えられたばかり。祝福すべきお誕生日に乾杯!🍸
これからどんな扉を開いていくのだろう。丞弥さんならではの役らしさを、どんな場面で見つけることができるだろう。

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無法松は、春団治は、王子様スマイルで微笑む。
役者・澤村丞弥の未来に乾杯!


【劇団天華 今後の予定】
2月 大江戸温泉物語あわら(福井)
3月 奥道後壱湯の守(愛媛)
4月 宝劇場(福岡)
5月 城山温泉(香川)
6月 大江戸温泉物語ながやま(石川)

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春陽座お芝居『八つき子』―澤村心座長の部屋―

2017.2.12夜@三吉演芸場

澤村心座長が。
「10年もの間、皆でわしを騙しくさって…!」
あの上品ではんなりして、お殿様役やボンボン役が似合う心さんが。
ずり落ちそうな眼鏡の下の目を潤ませて、酒瓶抱えて、どっかり足を組んで、悔しさに唇噛みしめている…。

『八つき子』は心さん演じる板前・亀吉の人間くささに、観客が自らの生活を重ねずにいられないリアルな家族の物語だった。今まで持っていた、心さんのイメージとのギャップに驚く一方で。
普段表に出している柔らかさを取り去っただけで、元々この方はこういう持ち味だったんじゃないか? 元からあった演技の扉の一つをパタンと開いただけなんじゃないか? 
あぐらをかいた姿を見ながら、この役者さんの内奥に仕舞われているたくさんのものを思った。

澤村心座長

心さんは舞踊の手が細かいなーと思う。サッと腕を振る仕草も、微細に左右に揺れる振りが入ったりする。

『八つき子』は現代劇。藤山寛美さんの芝居を元に、澤村新吾さんが立てた芝居だという。
亀吉は子どものときから料亭・吉善で修行した板前さん。遊びもせず修行一筋、お人好しな性格だ。
ある日、大将(澤村新吾さん)が店のみんなを呼び集めた。
「亀、お前いくつになる?」
「39になりました」
「お前、特に好きな人はおらんのか?」
「へえ、そりゃ知り合う女の人やお客さんでも、べっぴんさんやな、かわええなぁと思う人はいてても、仕事、仕事で…。わしは生涯、女房は持たれへんかなぁと思うとります」
「よし、おらんのやったら、静子と一緒になれ」
静子とは大将の娘(澤村みさとさん)のことだ。突然言われて、きょとんとする亀吉の表情が実に可愛い。
「静子が『亀ちゃん優しい人や、亀ちゃんと一緒になりたい』と、こう言うんや。亀、静子と一緒になって、この吉善の跡継ぎになってくれ」
思ってもない幸福に亀吉はまなじりを下げて承諾する。修行仲間の鶴吉(澤村かずま座長)や妙ちゃん(澤村かなさん)も万々歳で、とてもおめでたい光景だ。

でも、この時点で一つ不穏な要素が浮かび上がっている。場面右端にひっそり座った、静子がずっと不安そうな顔つきをしていることだ。何か、この結婚には秘密があるんじゃないか…。
みさとさんの芝居によって、場面がぐっと多層的になっていた。くったくのない明るい声が大らかに育てられたお嬢さんっぽい。

澤村みさとさん
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結婚から10年。健太(澤村煌馬さん)という息子も生まれ、亀吉はすっかり息子を猫可愛がりするお父さんになっている。遊びに来た鶴吉相手にウキウキお喋りするシーンが良い。
「日曜日なぁ、健坊のサッカーの試合なんや。今度の相手は強うてな、なかなか勝たれへんのや…」
ここで思いついたように妻の静子を振り返り、
「なぁ静子、今度からな、健坊の弁当、ハンバーグ一個増やしたり。力がつくようにな」
「はいはい。まったくあんたってば、うちと健太とどっちが大事なん?」
「ええ、う~ん、そりゃあ…(ちょっと考えてニッコリ)健坊や!」
なんてザ・ホームドラマなんだ!(笑) 心さん、実際に良いお父さんそうだものな…😋 こういう場面のリアリティを見ると、俳優さんは親になることを役幅の財産にするという選択ができるのだなと思います。

そんな日々の中、結婚前からの“秘密”が突然明かされる(その中身はここでは伏せておきます)。亀吉は支えを失ったように、よろよろと柱にしがみつく。
「健太の父て、静子の旦那て、吉善の大将て…皆に言われて…10年、桶の中で泳がされとったんか…!」
これが飲まずにやってられるかと、飲めない酒をごくごくあおる。酔って座った目で、虚ろに地面を見つめるばかり。

二重の意味でギャップに目を見開いた。
一つは、これまでよき夫・優しいパパの顔だった“亀吉”の、怒りと悲しみが表出すること。
もう一つは、澤村心さんという役者さんのイメージが新しく膨らんだこと。酒(実際は水)で濡れた心さんの口がおもむろに開いて、
「…静子ぉ…」
と重たく告げたとき。声の冷え具合に思わずビクッとした。

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【川千鳥】 手が切れてしまいましたが💦 去っていく女に手を振る…という振り。心さんの踊りは抒情的だなぁと思わされることが多いです。

亀吉のような、日常の延長線上にある役を演じたかと思えば。やはり『御浜御殿綱豊卿』みたいな、高貴で理想に燃えるお殿様がハマり役に見えたりする。
多くを語らずニコニコしている心さんは、まるで行き止まりの見えない部屋みたいだ。2DKだと思ったら3DKで、と思ったらもう一つ部屋があって、まだまだ知らない扉が隠れていそう。

一人の演技者の、様々な芝居を、ひと月にまとめて観られるからこそわかること。大衆演劇という芸能のぜいたくさ、春陽座という劇団の上質さだ。

心さんについては昔こういう記事も書いてました⇒木漏れ日に憩う―春陽座・澤村心二代目座長―

【春陽座 今後の予定】
2月 三吉演芸場(神奈川県)
3月 大江戸温泉物語ながやま(石川県)
4月 四国健康村(香川県)
5月 宝劇場(福岡県)
6月 ホテル龍登園(佐賀県)

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春陽座お芝居『御浜御殿綱豊卿』―春陽座という楽器―

2017.2.7 夜の部@三吉演芸場

「おはまごてん・つなとよきょう」…なんて、いかつい題なんだ(笑) 事前に友人に教えてもらったところ、真山青果作の史劇で、歌舞伎でも上演される作品だそうだ。

私が今まで、大衆演劇で観たことのないタイプの芝居だった。上演1時間半の大部分が、心さん演じる綱豊卿とかずまさん演じる赤穂浪人・助右衛門の討論(!)に費やされる。

観ていて思ったのは――舞台全体が“楽器”!🎹🎻
春陽座メンバー一人一人の動作・立ち位置がバチッと噛み合うべきところで噛み合う。膨大なセリフの掛け合いも音楽的だ。なので今回は、舞台と演者が“どんな音楽を奏でていたか”という観点からの振り返り。

時代は浅野内匠頭切腹から1年後。冒頭は、甲斐宰相・綱豊(澤村心座長)に、妾・お喜世(澤村かなさん)が相談するシーン。お喜世の心配事は、兄の助右衛門(澤村かずま座長)が今日のお浜遊びを隙見したいと言ってきたことだ。
綱豊から「そなたの兄は浅野家に仕えていたな?」と問われて、お喜世は兄の真意に気が付く。すなわち助右衛門は、お浜遊びに参加する仇・吉良上野介の顔を見極めようとしているのではないか?

ここから、ほんの数秒で行われる流れが美しい。
① お喜世のセリフ「まさか兄上様はわたくしを謀った…?!」
② かなさん、言いながら弾かれたように立ち上がる
③ 綱豊のセリフ「いや、構わぬ」
④ お喜世をなだめるように、心さんの右手がすっと前に出る
1~4が、全部一つの音節の中に入っているような収まりの良さ! 

心さん・かなさんは、どちらもはんなり上品な類似タイプのお顔立ち。二人を覆うように、背後に大きな傘があるのがまた絵になる。お雛様とお内裏様の密談のような、作り物めいた美の光るシーンだった。


澤村心座長。穏やかに大義を見つめている綱豊だった。

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澤村かなさん。お喜世の美しさのみならず覚悟の鋭さが現れていた。

芝居の見せどころ、綱豊VS助右衛門の会話も面白い。というか二人の位置関係が面白い。この位置はどーしても絵で説明したいので、昔資料用に撮影していた三吉の舞台写真を利用します。

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↑こういう位置でした。綱豊は舞台中央、そして助右衛門は花道のスタート地点――つまり舞台の外側にいる状態。

このときのかずまさん助右衛門の目がコワイ。あの大きな上がり気味の目をさらに尖らせて、ジロ…と舞台中央のほうを下から見る(この日は花道の近くに座っていたので、その目つきがよく見えた)。助右衛門は疑っている。綱豊は仇討ちに協力してくれるのか、それとも自分が次期将軍になりたいだけなのか。
疑いの表情と、彼が舞台の外=綱豊という人間の外にいるという位置が重なって、独りで怒りを抱えている姿が浮き彫りになる。

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澤村かずま座長。とてもピュアな感じがする役者さんだ。

一方で綱豊は、助右衛門たち赤穂浪士がどれほどの覚悟でいるのかを確かめようと、あえて大石内蔵助の悪評を言ってみたりする。

丁々発止のやり取りが続き(キャッチボールも非常にテンポ良い)、やがて助右衛門の仇討ちへの思いを信じた綱豊が、手を差し出す。
「そなたたち、日本の義士を信じたいのだ!」
舞台中央から、舞台外側へまっすぐ差し伸べられる右手。
けれど助右衛門は目を背ける。

綱豊→助右衛門の一方通行の呼びかけに“折り返し”が訪れるのは。綱豊が、実は公家から浅野家再興を願い出るよう頼まれていることを話したときだ。
助右衛門はハッと目を見開いて、綱豊を凝視する。
「お側へ参りまするー!」
助右衛門はガバッと立ち上がって舞台の内側に駆け入る。かずまさんの走り寄る姿が、さっきの“差し出された右手”に対する応答のように見えた。

助右衛門は綱豊の隣に座して、言葉にならない声で言う。
「浅野家再興、嘆願の儀……嘆願の儀…」
涙ぐみながら必死で首を横に振る。
※前提に「浅野家が再興される→家を滅ぼされたことに対する仇討ちが成り立たなくなる→赤穂浪士的には浅野家再興は阻止すべき事態」という理論があります。これは見ているうちに理解できる作りになっていました。

綱豊は助右衛門の泣き顔を見て微笑む。そして膝を曲げ、目線の高さを合わせて、肩を叩く。ずっと討論していた二人の心がようやく近いところに落ちた――という、締めの小節。

真山青果や歌舞伎や歴史にもっと造形の深い人が観たら、きっと内容的にも心に留まるところがたくさんあると思うのだけど…。
私の率直な体感では、三吉演芸場の広い舞台と演者の身体が“鳴り合っていた”1時間半だった。さらにその演奏の奥に、登場しない大石内蔵助が重奏低音として響いている。澤村新吾さん演じる新井白石のセリフ「雲は描いているうちにその姿を変えてしまう」(大石内蔵助の隠喩)とかに象徴されている。

このガッチリした芝居の翌日には「意地悪ばあさん」、翌々日には「東男と京女」という喜劇だった(すごいギャップ!)。
≪芝居の春陽座≫、観るのは2年ほど空いてしまったけれど、元々上質だった芝居がより精度を増した気がする。座員さんの人数は減ったけど、その分二人座長の輪郭がくっきり押し出されている。きっと無数の試行を重ねられた上に、今の芝居体制があるのだろう。

2月の三吉演芸場は、文字通り春の陽ざしが差し込んだかのように楽しい!

【春陽座 今後の予定】
2月 三吉演芸場(神奈川県)
3月 大江戸温泉物語ながやま(石川県)
4月 四国健康村(香川県)
5月 宝劇場(福岡県)
6月 ホテル龍登園(佐賀県)

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戯作者たち―辰己小龍さん・藤乃かな座長・龍新座長―

≪オリジナル芝居≫――お外題表にこの言葉が載っているとドキドキする。どんな話なんだろう、どんな演出なんだろう。つるつる出来立てのセリフに、新鮮なキャラクター。まるで、老舗ばかりがズラッと並ぶ商店街に、新規店が参入するみたいだ。

大衆演劇のお芝居の多くは、むかーしから口立て稽古で受け継がれてきたものだ。先代から子どもへ、師匠から弟子へ。アレンジを加えられながら長い時間の中で熟成させられた、昔ながらのお芝居は、ちょっとしたセリフの中にも人の息吹が多層にこもっている。

でも私たちは皆、知っている。新しいお店がなくちゃ、商店街自体が活性化しないってこと。
「初めてのお芝居やるっていうから、来ちゃった」
この道何十年のマダムファンが、座長オリジナル狂言の日にいそいそとやって来る。

今回は新しい物語を創り出してくれる役者さんの中から、個人的に特に印象深いお三方の話。
※記事中では、完全な創作に加え、漫画や小説など別ジャンル作品の脚本化を含めて戯作と呼んでいます。

◆扉を開く人 辰己小龍さん(たつみ演劇BOX)



大衆界で“戯作者”と言えばこの方、小龍さんと言えば戯作!という認識は、決して私の贔屓目ではあるまい。
妖魔の世界からの招待状、『夜叉ヶ池』
武士という生き方の悲しさがにじむ『武士道残酷物語』
人間を遥かに俯瞰するまなざしが、小龍さんの戯作にはそびえている。なおかつ、予備知識なしでもわかりやすく、テンポがよく、面白い!

私が小龍さんの書いた芝居で一番回数を観ているのは、『明治一代女』。お誕生日公演で作られた芝居だそう。小龍さん演じる芸者・お梅の、ひたむきな生き様が描かれる。

この芝居を何度か観て、ハッとしたこと。物語の動機は、お梅の仙枝への恋、巳之吉のお梅への恋なのだと思っていたけれど。お梅が仙枝に真に惚れ落ちてしまうのは、「お前は芸者でいるような女じゃない」と言われたことがきっかけだ。また巳之吉も、「自分は本来なら箱屋なんかで終わる男じゃない」とくすぶっている。
“自分はこんなとこにいるべき人間じゃない”――お梅が仙枝へ、巳之吉がお梅へ手を伸ばすのは、恋と同時に自尊心の訴えでもあるんじゃないか…
色んな観方をさせてくれるのは、それだけ作品が厚いからだ。

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↑2016年10月のお誕生日公演。晴れ晴れとした笑顔

昨年11月にブログを始められた。毎日更新されている、陽気な文章が楽しい♪ ⇒辰己小龍のブログ
ブログのおかげで、超多忙な役者生活の中、いつ大量の作品を書いているんだ…?という長年の疑問が解消されました。『河内十人斬り』の執筆中、舞台袖で資料を読み進めていたエピソードは、小龍さんが才能はもちろん――絶え間ない努力の人である、ということを改めて教えてくれる。
“辰己小龍”は、いつまでも芝居の扉を開き続けていってくれる遥かな背中だ。


◆“女”の表現者 藤乃かな座長(劇団都)

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藤乃かな座長は立ち役もこなされるにも関わらず、私のイメージでは“女”という表象を一番強く持っている役者さん。多分、初見がオリジナル芝居『丸山哀歌』だったせいが大きいと思う。2015年夏、大きな衝撃を受けた芝居だった。同名漫画を元に作られたそうだ。

かなさん演じる結(ゆい)は、年を取ってあまり客のつかなくなった女郎。長い年月、丸山遊郭に閉じ込められている。
「もっとお話を聞かせてください。もっと色んな国のお話をしてください!」
結が目を輝かせてせがむのは、武士・桂木(都京弥座長)の異国の話だ。エゲレスの蒸気機関車の話、メリケンのワシントンの話…。
「そん人の夢の話聞いとると、うちまで一緒に夢を見られるような気がした!」
人生の大半を壁の中で過ごそうとも、心だけは自由に羽ばたいていく。男の欲のはけ口にされ、力にねじ伏せられ、なお人間であることを諦めなかった女の笑顔が最後に残る(観た当時の記事)。

オリジナル芝居を創る人は、旧来の芝居の演出にも独自性が光るのが面白い。定番の『へちまの花』にも、リアルな女の顔が書き込まれていた。かなさん演じる器量の良くない女の子・およね。庄屋と若旦那が、およねの嫁入りを中止させたいばかりに、狂言を仕組んだことが発覚したとき。
「おら、わかってた…ホントはわかってたんだ、若旦那がおらなんか一目惚れするはずねえって…でも短い間でいいから世間並みの夢が見たかったんだ…」
舞台の左側にうずくまって、虚空を食い入るように見つめる。静かに涙をたたえる瞳。およねは、自分が不細工だとわかっている女の子――その痛みが突き刺さる。“美醜”は女性にとってはそりゃもう、社会からの最大の圧迫の一つだ。

今まで観た劇団の『へちまの花』のこの場面は、たいてい主人公の女の子は酷い仕打ちにうつむき、本人の代わりに兄(または姉)が怒りを述べる、という流れだった。
でも、かなさんはおよね自身に語らせる。
「おらも、お嫁に行くって夢が見たかったんだ…」
どんなに辛いことも自分で語る女の子。
だから最後に庄屋の息子(京乃健次郎さん)が、舌っ足らずに「あなたは私にとってのヘチマの花っ!」と叫んだ時。舞台は、客席に優しく染み通っていく。

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これから先、どんな女を描いてゆくのだろう。まず来月の横浜・三吉演芸場公演で、久々に関東での再会!


◆映画育ちのクリエイター 龍新座長(劇団新)

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劇団新さんは関東回りだし、観ようと思えばいつでも観られるよね、と呑気な油断をしていたので。私は新座長が新進気鋭の創作者だということを、去年2月の立川けやき座公演まで知らなかった…(猛省)

初めておお…?と思ったのは、オリジナル芝居ではなく『関の弥太っぺ』。ご存じ、股旅ものの名作だ。ラストシーン、舞台幕は下りていて、弥太っぺ(新座長)一人が花道の端に立っている。幼い頃助けた少女・お小夜(小龍優さん)との別れを、じっと噛みしめている。
――すると、弥太っぺの背後の幕がもう一度上がった。そこで待ち構えていたのは…
ネタバレ防止のため、誰がいたのかは書きませんが。この場面を観た瞬間、殺伐とした渡世を生きる弥太っぺにとって、お小夜はたった一つの清い記憶だったということが視覚的にわかる。

こういう絵で見せる演出って珍しい気がする…と思って新さんのブログやTwitterを見て、大変な映画好きであることを知った。それもハリウッドヒーローとか、ソウシリーズとか、洋画をたくさん観ているみたいだ。あの発想力の土台には、スクリーンがあるのか!

新さんのオリジナル芝居を観ることができたのは8月@行田もさく座。笑いどころ満載の冒険譚『俺は…太郎』、ピュアな友情と恋の物語『黄昏空の下で』
特に大好きなのが『俺は…太郎』だ。今でも新さんの演技を思い出すと笑いが出るくらいおかしいのだけど、何より大衆演劇そのものをパロディ化するようなシニカルな視点があったのが大収穫!(観た当時の記事)

『平成に現れた森の石松』という爽快なオリジナル芝居もあるそう。こっちも、いずれ当たりたいと思っている(『平成に…』については、半田なか子さんが楽しさが伝わってくる記事を書かれています ⇒小屋っ子の戯言)

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↑こういうあどけない表情はティーンのよう!

新さんはまだ25歳という若さΣ(・□・;) 映画育ちの感性が、大衆演劇の任侠×人情の世界にどう斬りこんでいかれるのだろう!

3人のみ所感を述べたけれど、他にも、クリエイターとしての力を発揮されている役者さんはたくさんいる。
芝居の時間、舞台を支配しているのは物語。だから物語を紡ぐ戯作者は、一種の神様みたいな役割だ。彼らのメッセージを、演者が観客に伝える。受け取ったとき、私たちの目はハッと開く。
――こんな見方があったのか!
――人の営みには、こんな喜びが、優しさが隠されていたんだ!
観たばかりの芝居を胸に抱いて劇場を出ると、風景は変わっている。劇場の内側の“神様”は、劇場の外側の論理すら、確かに打ち崩してくれることがある。

≪オリジナル芝居≫――お外題表にこの言葉が載っているとき。それは超多忙な大衆演劇の世界で、戯作者が睡眠時間を削り、台本を打ち直しては孤独に悩みながら、真剣勝負で作品を繰り出す、ということ。
だから、せめて伝えたい。
貴方の試行錯誤が、私たちの世界を変えてくれているのだ、と。

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【SPICE】大衆演劇の座長が化粧品のメンズイメージモデルに! 藤美一馬座長×「Lunethor」

藤美一馬座長(48)。
この年齢、けっこう信じられないんですが…歌の時間とかすっぴんショーとかで素顔を拝見すると、まだ完全に「若者」枠です。3月のお誕生日で49歳とか嘘でしょ…💦

いつ見てもつるつる美肌な一馬座長。「Lunethor」(リュネトール)というブランドの化粧品のイメージモデルになりました!
ニュース記事を書かせていただきました。

【SPICE】大衆演劇の座長が化粧品のメンズイメージモデルに! 藤美一馬座長×「Lunethor」

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藤美一馬座長×「Lunethor」

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「Lunethor」公式フライヤー
※FC2だと横400pxの画像までしか上げられないので細かいところがつぶれてしまうのですが、SPICE記事のほうにはきれいなフライヤー画像が掲載されています。

創立して6年の「Lunethor」は、角質ケアに注力した商品作りが特徴。女性の肌トラブルの解消を目指して、社長自身が大学院時代に開発したという化粧液・美容液は、幅広い世代の支持を得ている。

毎日、何回も舞台化粧をする大衆演劇役者にとって、肌のケアは重要だ。一馬座長がお客さんからの差し入れをきっかけに商品を愛用していた縁から、ブランド6周年のアニバーサリーメンズモデルとして今回の起用が決定した。

藤美一馬座長コメント「4年程前、お客様の差し入れでいただいた事がきっかけでずっと愛用しています。40代になり、僕もそろそろエイジングケアをしなくてはいけないな、と思っていた頃でした。リュネトール化粧品を使うといらない角質が取れつるつるですべすべなお肌になるので、舞台でお化粧をする僕にとっては化粧ノリを良くするという目的も大きかったです」


⇒ニュース記事はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

フライヤー、座長の若々しい素顔がたくさん。劇団KAZUMAの舞台でお馴染みのマジシャン・とおるちゃんとの2ショットまで! 
こちら、「Lunethor」の社長さんによるもの。社長さん、とってもスマート&ハートフルな方です。一馬座長のファンの方が喜んでくれれば…とのことでした(*^_^*) 

化粧品をきっかけに、新たに大衆演劇に興味を持って下さる方もいるかも!と、Twitterでこの記事についてサーチしてみたら。大衆演劇ファン以外の方も「気になる」とつぶやいて下さっているのを発見して、一人スマホを握って歓喜にむせぶ(笑) 
書き手をやらせてもらってよかった、と思いました🎶

【劇団KAZUMA 今後の予定】
2月 八尾グランドホテル(大阪)
3月 せら温泉(広島)
4月 くだまつ健康パーク(山口)

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【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十一] みんな大好き!大阪・鈴成り座のたこ焼きのヒミツ

写真で見るだに、おいしそう…!
1月、鈴成り座に行くたんびに食べました。ソースマヨ・しょうゆ、どっちもとっても美味です!

8個で300円、鈴成り座の名物・たこ焼きの調理現場を取材させていただきました!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十一] みんな大好き!大阪・鈴成り座のたこ焼きのヒミツ

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一番人気のソースマヨ!

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鈴成り座外観

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調理しているところにお邪魔させていただきました

今回は鈴成り座の楽しい従業員さん、通称“にぃに”に全面的にお世話になりました! 大変ご多忙な中、ありがたい限りです…。おかげで大衆演劇ファンに喜んでもらえる記事ができました。この場で改めて御礼をm(_ _"m)
以下も、“にぃに”に伺ったたこ焼きの工夫の話です。

(記事本文より)
「今日は18:00が芝居終わりやから、そこから逆算して-25分で作り始めるんよ。そしたらちょうど芝居が終わる頃に焼き上がる」

しかし、大衆演劇の芝居は日替わりだ。したがって、芝居の終演時刻も毎日微妙に違うはず…。

「つまり劇団の座長さんに、今日の芝居が何時に終わるか、毎日聞いているってことですか?」

「うん。毎日聞いとる。時々芝居がアドリブで延びたりするけどな(笑)」

毎回アツアツのたこ焼きが出てくるのは、計算に基づいていたのか…。


また、たこ焼きの話だけでなく、鈴成り座全体の話も聞かせて下さってます。特に昨年12月に初乗りだった劇団新の人気ぶりは、気になっていたので聞いていて嬉しかったポイント!

――鈴成り座に毎年乗っているとか、縁の深い劇団というとどちらでしょう?

「里見劇団進明座」。毎年5月に乗ってる。

――里見要次郎さんが総座長をしているところですね。

うん、若い人もたくさんやっとるよ、直樹、祐貴、龍星、竜汰…。

――12月は関東の人気劇団「劇団新」が初乗りでしたね。初めての関西進出なので関西での反応が気になっていましたが、すごかったと聞いています。

前半が15日まで、後半が24日まで。後半、期間が短いやろ。でも前半と後半の入り数いうのが、ほとんど一緒や。それだけ右肩上がりに上がっていって、お客さんがついたいうことやろね。

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リリースをTwitterで告知してすぐ、「私はしょうゆ派」「しょうゆマヨ派」などなどコメントがいただけて、みんな好きなんだなぁ…と(*´▽`*) 

本文中にも書かせていただきましたが…たこ焼き調理中の鈴成り茶屋には、舞台の芝居のセリフが聞こえてきます。
≪恨みは果たしたぞ~!≫
ヤマ上げを聞きながら、ジュージュー焼けていくたこ焼き。テキパキと作業する従業員さん。
コンパクトな芝居小屋では、今日も舞台と、食べ物と、人が陽気に交わっている。

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