【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之拾参]こんな世界があったのか!劇団天華・千夜座長にお芝居の話を聞かせていただきました!

昨年11/8(日)の“喜び”は忘れられない。
SPICEで篠原演芸場おにぎり特集の取材をさせていただいた後、偶然そのまま劇場に残っていて、劇団天華を初めて観た。
関西ではすでに人気の劇団さんと聞いていたので、遅ればせながら…。

昼の芝居が『三人出世』。
夜の芝居が『芸者の誠は石清水』。
昼夜の間、十条駅前のミスタードーナツで友人たちに興奮のLINEを送りつけていた。
「天華のお芝居、面白い!視座の持ち方がすっごい!」
(当日の興奮を綴ったブログ記事)

壁だと思っていたところが実はカーテンで、それが目の前でいきなり開かれたような、爽快感!
全国どこかにいる大衆演劇ファンが、まだ天華の芝居を観たことがなくて、もし、一人でも私と同様の喜びを味わっていただける方がいたら…
そんな風に思い、SPICEで書かせていただきました。

大衆演劇の入り口から[其之拾参]前編・こんな世界があったのか!「劇団天華」への招待 GWは大阪公演



(記事本文より抜粋)
あ! と “驚く喜び”。

華やかな洋風のドレス、コミカルなショー、宙づりを組み込んだアクロバティックな演出―大衆演劇はそんなこともできるんだ!定番のお芝居に新しい息が吹きこまれ、まったく違う切り口で迫って来る―このお芝居にはそんな見方もあったんだ!

「劇団天華」の客席に座るときは、まるで行き先のわからないキラキラ派手な車に乗り込むような気分。まっすぐの道でも突然右ハンドルを切ったりする。次はどこへ連れて行ってくれるのだろう?次はどんな風景に出会うのだろう?

⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

そしてもういっちょ。
千夜座長にインタビューを申し込んだところ、快諾いただきました!
滋賀・あがりゃんせでお話を伺いました!

大衆演劇の入り口から[其之拾参]後編・聞かせてください、お芝居の話!澤村千夜座長(劇団天華)インタビュー!

CIMG6614.jpg

(千夜座長インタビューより抜粋)
―― 最近の大衆演劇雑誌のインタビューで、大事にしてることは何ですかっていう質問で、「型破りであること」とおっしゃってましたね。型を破っていくことっていうのはいつ頃から意識されてるんですか?

千 ここ3、4年くらいかなぁ…。やっぱね、特別公演的なことをするときに、なんかそれなりに人目を引くようなことをしなきゃいけない。最初、僕の中で記憶にあるのが、梅南座での『牡丹灯籠』ですね(2011年誕生日公演)。今までお師匠さんから教えてもらったお芝居しかしてなくて、誕生日公演でも初めてオリジナル的なことをしたんです。自分で、師匠に教えてもらった芝居じゃないのを、やった。そのときにすごく達成感があって、お客さんも良かった~って、こんな芝居初めて観たとかいう感想を言ってもらえて、すごく嬉しかったですね。

⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

あがりゃんせの最寄り・おごと温泉駅は、京都駅からJR湖西線で20分ほど。
閑散とした湖西線の中、手帳にインタビューの質問項目を整理しながら、き、消えたい…くらいのド緊張でしたが。
いざインタビュー開始となると、せっかくご多忙極まりない中お時間いただいてるのに、緊張してる場合じゃない…!と必死スイッチが入りました。

華やかで、若々しくて、キラキラしている天華さんだけども。
芝居の根本には、非常にまっとうな、昔ながらの人情が広がっているように感じます。
弱い立場の者への慈しみがにじむ、大衆演劇ならではの芝居。
それが、澤村一門のお芝居の持っている力なのでしょうか。

あと、インタビュー中にとってもほっこりしたこと。
『お里沢市』についての話題になったときの千夜さんの発言。
「出入りとかする特殊な舞台になるんで、どこまりできないんで」

どこまり…

「どこでも」って意味の愛媛のお国言葉ですね。
(記事では読者にわかりやすいよう標準語にしています)
ふるさとの言葉は舌に残るものなのだなぁ、と心温まった瞬間でした。

にほんブログ村 演劇ブログ 大衆演劇へ
にほんブログ村

スポンサーサイト

劇団KAZUMAお芝居「紺屋高尾」―藍に咲く桜―

2016.3.21 夜の部@池田呉服座

一馬座長の頭の上に、桜が咲いていた。
「花魁、三月十五日をお待ち申し上げます」
泣き伏す頭の上、背景幕に描かれた桜の花が、その姿を包むみたいだった。

一馬座長演じる久蔵は藍染めの職人だ。
「花魁道中で一目見た高尾太夫を、どうしても忘れられなくて」
恋に惹かれて、夢に焦がれて。三年働きに働いて、十五両をためて、やっと高尾の客になることができた。
そうしたら、奇跡が。
「来年三月十五日、年季が開けたら、あちきをぬしの女房にしておくんなまし」
ありえない夢が、花が、この手に。

藤美一馬座長(芝居後の口上)


4ヶ月ぶりのKAZUMA!ツイッターで知り合ったお友達のお外題情報を元に、『紺屋高尾』の日をいそいそ予約。

このお芝居を観るのは2年ぶりなのだけど、とかく観た後の幸福感が高い。一馬座長の久蔵の一生懸命な恋心と、気持ちがひとつになってしまう。
高尾に会うため、三年死にもの狂いで働いて、ついに、
「親方、あの、私の十五両を出してください」
と紺屋の親方(龍美佑馬さん)にちょっと恥ずかしそうに言う場面や。
店への案内役の竹庵先生(冴刃竜也副座長)が、なかなか高尾のことを聞き出してくれないもんだから、
「あい、あい!」
って、まるで駄々っ子みたいにせかす場面。
座長の泣きそうな表情、柔らかな声、人物造形が実にキュート!

そんな久蔵の恋を見守るのが、佑馬さん演じる親方と、将さん演じる職人仲間。この二人の温かいこと!

龍美佑馬さん
CIMG7967.jpg

柚姫将副座長
CIMG7928.jpg

親方は久蔵の執念に呆れながら、恋に夢中になりすぎてないか?と常に心配げ。
「お前、三年も前の高尾のこと、忘れてなかったのか…」
一方、職人仲間は色々とアドバイスを寄越す。
「お前ひとりで吉原へ行ったって通しちゃくれないだろ…。そうだ!医者の竹庵先生なら、女郎買いの名人だって話だ」
二人そろって真剣に久蔵を案じ、本当に大丈夫か…?と顔を見合わせる。

みんなの後押しを受けて、ようやく辿り着いた高尾の座敷。しずしず出てきた大介さんの花魁姿は、お人形さんみたいな怜悧な美しさだった。

千咲大介座長
CIMG7944.jpg

2年前に観た将さんの高尾が情の厚さをにじませていたのに対し、大介さんの高尾はクールビューティー。まさに高嶺の花という感じの造形が、物語を際立たせる。
最初は金持ちのフリをしていた久蔵は、やがて正直に自分は職人ですと打ち明ける。そして泣き声混じりに吐露する。
「三年経ったらまた来ます。金をためて来ます」
「だが、今は全盛と謳われた高尾太夫だ、いつまでもここにいてくれるとも限らねえ。三年の間に、身受けされてどこかのお囲い者になるかもしれねえ」
「それでも、この広い江戸の空の下、花魁がどこかで暮らしている―そう思うだけで俺は幸せです」

幸せ…
欲しいものが手に入ったから幸せ、というのでなく。
この手から、いくら遠くにあっても。
高尾が同じ世に生きていてくれる。一番尊い、愛しい人が同じ空の下に在ってくれる。
ぐすっと鼻をすすりながらの、一馬座長のセリフに詰まっていたのは。
希望を見上げてなんとか日々を生きていく、市井の人のかすかな夢だった。

『紺屋高尾』は十八世紀初期の実話に基づいているそうだ。そこから古典落語・浪曲が生まれ、広く愛されてきた。
昔の人々も夢見たろうなぁ。藍染め職人の叶えた恋の話を、我がごとのように嬉しがって、口々に語り合ったろうな。
こんなしがない人生にも、希望が笑むことがあるのだ―
人々が久蔵と一体となった喜びが、『紺屋高尾』という物語を現代まで伝えてきたように思えてならない。

「江戸のどこかで、たまたま俺と出会ったとき、どうか知らん顔して通り過ぎたりしないでください」
「“久さん、元気?”と一言、その一言だけでいいんです、どうか声をかけてください」
半ば祈るような、必死な口調の久蔵。その顔を見つめ、シャンと美しい横顔で高尾が言う。
「ぬしの正直に惚れんした。どうかあちきをぬしの女房にしておくんなまし」
「…へっ?」
ああ絶対、昔の人も嬉しかったろう!一馬座長がすっとんきょうな声を出したとき、池田呉服座に温かいものが満ちた。
よかったね、本当によかった、そんなやさしい喜びの言葉が、客席から舞台にたしかに送られていたと思う。

いざ高尾が紺屋に嫁いで来たとき、久蔵と同じくらい“感無量”みたいな表情をしている親方と仲間が微笑ましい(笑)。舞台端から見守る、佑馬さんと将さんの感慨深げなまなざしが、場面をずっと味わい深くする。
それぞれの役者さんが、それぞれの役で、立ち位置で、一つのお芝居に向き合う。当たり前のことみたいに全員がそれをする、劇団KAZUMAの芝居。だから彼らの芝居は、温度をもって胸の奥まで入ってくるんだろう。

高尾が嫁いでくる直前の場面で、将さんが一人で掃除をしているのだけど、その掃除っぷりがやたらとキレが良い(笑)
元気いっぱいに床を掃きながら、
「毎日一生懸命働いてれば、なんか良いことあるってもんだ!」
って将さんが言うと、ホントに生きてりゃ良いこともあるって気がしてきます!

藍染めの手に、桜が舞い込む。
「久さん、元気?」
やっぱり、人生は生きるに値する。

三月十五日を過ぎて。
お芝居の中の紺屋にも、池田呉服座の背景幕にも、大阪にも、東京にも、桜が今を盛りと咲く。幸福そうに花開く。
季節はとうに――春!

にほんブログ村 演劇ブログ 大衆演劇へ
にほんブログ村