劇団朱光お芝居「お吉物語」


2012.12.13夜の部@湯宴ランド小岩
お芝居「お吉物語」

写真・水葉朱光座長(12/13舞踊ショーより)


子供の泣き声が耳について離れない。
これは子供だ。
元芸者だけど、アメリカ帰りの"らしゃめん"だけど、酒を浴びるほど飲むようになったけど。
これは少女だ。
水葉朱光座長演じるお吉は。

唐人お吉と言えば、アメリカと日本に引き裂かれた哀れな女。
酸いも甘いも噛みわけたと言うけれど、酸いだけを多く与えられすぎた、そんな女。
…ってイメージだったけど、見事に覆されました。

朱光座長のお吉は、「いいえ」と言う代わりに、はにかみながらの「ううん」。
「私は」と言わず、「あたしねぇ」と歌うように話す。
下心満載のハリス(水城舞坂錦副座長)に呼び出されて、
「一晩お話しましょう!」(実際はお話なわけない)
と言われると、
「はい」
とあっさり頷いて部屋に入ってしまう。
おっとりした女の子がそのまま大きくなったよう。
多分ずるいこととか、汚いこととか、考えつかないんだろう。
優しくて素直で御しやすいから、運命に逆らう力もなかったんだろう。

そんな子供のようなお吉が、五年ぶりに下田に帰って来れば、「唐人」と蔑まれる。
飛んでくる石つぶて。
「痛いよぉー!」
ってわんわん泣いて、うずくまって、でも誰も慰めてはくれない。
見ていてこっちまで苦しくなる。

そして、その苦しみが爆発する場面がやってくる。
かつての恋人・鶴松(ゲストの龍新さん)の家を訪れたお吉。
同情した鶴松の母(水城舞坂錦副座長・一人二役)に、家の中に上げてもらった。

でも、鶴松の母が台所に行っている間に、お吉はそっと家を出ていく。
本当はここにずっと居たいけれど。
自分が家に居れば、鶴松とその母が世間にどんな目に遭わされるかわからない。

繰り返し繰り返し部屋を振り返って、
離れがたい畳にすがり、
自分の体を引き剥がすようにして敷居まで来て、
なんとか戸を閉めた途端、

「やだあ~~~~~っ!!」

慟哭。

ハリスに望まれなければ、鶴松の女房として一緒に暮らしているはずだった。
本当なら、この敷居の向こう側で、温かな暮らしをしているはずだったのに。
こんな人生は嫌だ。
こんなものがあたしの人生だなんて嘘だ。
お吉のくしゃくしゃの泣き顔から、そんな叫びが聞こえるようで。

ここからお吉はまだ転落していく。
―泣いて昔が返るなら なんで愚痴など言うものか―
おっとりした少女の口から、愚痴とお酒の匂いしか零れなくなった頃。
ようやく、本当にようやく、救いの手が差し伸べられる。
鶴松が、飲んだくれているお吉を迎えに来てくれたのだ。

さらに、信じられないような嬉しい言葉。
「お前は、俺の女房だ」
鶴松の前で、慌てて乱れた髪と着物を直すお吉の仕草がまた、少女めいていて可愛いのだ!
泣き声が胸に痛かったこのお芝居に、温かな結末が用意されていて、心底ホッとしたのであります。

私は朱光さん初めてだったけど。
観劇仲間によれば座長さんの演技はお芝居によって全く色が違うらしく、次もわくわくして観れそうです。
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