雨、夕焼け、それから独り―木川劇場の忘れがたい日―

2017.1 11昼の部@木川劇場

1/8~1/11、新年早々に大阪へ行って参りました!
今回、観てきたのは4劇団。劇団KAZUMA@鈴成り座、劇団天華@池田呉服座、お初の劇団澤村@三和スタジオ、劇団大川@木川劇場。
※SPICE連載のために以前から取材させていただきたかった劇場も訪問し、インタビュー等、多々お世話になりましたm(_ _”m) こちらの記事は2月頭のリリースを予定しています。

さて1/11には3つの理由から劇団大川へ足を運びました。
① 以前友人から借りた同魂会のDVDで、椿裕二座長のさりげない滋味深さが気になっていた。
② 裕二座長は1月木川か~とTwitterで「木川劇場」を検索したら、ファンの方がゲスト予定を載せて下さっていた。11日はあの沢田ひろしさんがゲスト!
③ さらに大川龍昇さんもゲスト!
つまり裕二さん+沢田さん+龍昇さんが同じ舞台に=十三へGO!(*ノωノ)

お芝居『嫁と姑』では沢田さんの圧巻の技術を堪能。おばあさん役(正確にはおばあさんを演じる役者の役)で、自由自在にのびのび調子を変える声、表情、身体に驚嘆しながらお腹いっぱい笑った。

続く舞踊ショーは、この1~2年で観たショーの中で、最も濃密な時間の一つになった。読んでいただいている方も、木川劇場のあの薄暗い客席に腰を下ろしていただいた気持ちで、3人のベテランの味わいをどうぞ一緒に…。

沢田ひろしさん【関東春雨傘】
トップショーが終わってすぐの個人舞踊だった。

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“関東一円 雨降るときは さして行こうよ 蛇の目傘”
舞台に滑り出る身体。見上げる視線の先、雨がぱらりと降ってくるようだ。

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この掴みどころのない役者さんには、本当に雨が似合うと思う。不透明な滴が舞台から客席の肌にこぼれて、けれど、すくう前に剥がれ落ちる。

“抜けるもんなら抜いてみな 斬れるもんなら斬ってみな”
小粋な曲の中に、湿り気がふわり混じっているのだ。

“さあ さあ さあさあさあさあ こわいものなし 女伊達”
畳みかけるメロディに合わせて、身体が伸縮する。ぴたぴた気持ちのいい形で止まり、傘も刀も、沢田さんの身体に吸い付くみたい。手足や腰に、体幹の強さがくっきりと浮き出る。

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静かな余韻を残して、沢田さんは猫みたいにはけていった。次の登場は花形・舞川修さん。キュートな美青年ぶりをたっぷり見せてくれた後、ショーはいよいよ座長の出番を迎える。

椿裕二座長【アメイジング・グレイス~赤とんぼ】
初めて観る裕二さん、女形舞踊は一体どんな…?と期待していたら。
暗闇の中に、“希望”がゆっくり咲いた。

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曲の始まりは、たった一人で立ち尽くす女。何も持たず何も望まない、乾いた姿に見えた。その表情が、ほんのわずかずつ、笑みの形になっていく。

“Amazing grace how sweet the sound”
(素晴らしき神の恵み、なんと甘美な響きよ)
“That saved a wretch like me”
(私のような人でなしでも、救われた)


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生の裕二さんは、映像で観たときよりもずっと、仕草・表情の一つ一つに慈愛がにじんでいた。生きることの中にある、苦い思いや孤独を噛みしめて、なおひとすじの希望を見上げる。

“I once was lost but now am found”
(私は見捨てられていたが、いま見出された)
“Was blind but now I see”
(私の目は見えなかったが、今は見える)


――と思っていたら、曲が変わった。

“夕焼け小焼けの赤とんぼ 負われて見たのはいつの日か”
『赤とんぼ』のメロディに乗せて、裕二さんの姿が寂しさを帯びる。笑顔が吸い込まれるように消えて、目が閉じられる。空中を向いた扇子の先がツッと客席をなぞり、頬に寄せられる。

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“十五でねえやは嫁に行き お里のたよりも絶えはてた”

後で調べたら、『アメイジング・グレイス』と『赤とんぼ』を繋いで1曲にした歌手の曲が存在したので、おそらくそれを使われていたのかな? 
この2曲は曲調が似ているだけでなく、繋げられることで何か一枚の深層が浮かび上がってくる気がした。裕二さん演じる女は、“私の目は見えなかったが今は見える”と、失望の後に光を見出して生きていく。けれど一人になると呟くのは、“お里のたよりも絶えはてた”…心の底には言葉にならない、遠い夕焼けのような寂しさが残っている。

※アメイジング・グレイス日本語訳:三宅忠明さんのもの

裕二さんの次は、沢田さんの歌の時間。決めた~決めた~お前とみちづれに~♪と『みちづれ』を歌う心地よい声を堪能した後、大川龍昇さんが登場した。

大川龍昇さん【みだれ髪】
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独り。独り。独り。
“ひとりぼっちにしないでおくれ”
ほっそりした白い体に打ち響く孤独。語りかける身体、というものが本当にあるのだ…。

ちょうど1年前、オーエス劇場で龍昇さんの『無法松の一生』の舞踊を観た。描き出された無器用な人生に涙が止まらなかった(こちらの記事の最後に書いています⇒2016年舞踊ベスト5)。
木川劇場での『みだれ髪』はまったく色が違ったけれど、響いてくる無言の声の痛烈さという意味では同じだった。

“投げて届かぬ 想いの糸が 胸にからんで涙をしぼる”

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木川劇場は静まり返っていた。細い風の吹き抜けていくような曲と、龍昇さん演じる女の吐息だけが花道に残る。

“すてたお方のしあわせを 祈るおんなの性かなし”
“辛や重たや わが恋ながら”

歌詞を聞くと、女は恋に破れたという。けれど龍昇さんの浮き沈みする身体を通して、“恋”という対象はもっと抽象的な望みに変化していく。縋りついても得ようとした何か―それを失った後の、殻の身体。独りきりで、たゆたう体。

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龍昇さんは若い頃に日本舞踊を身につけたと本で読んだ。足が音もなく回る美しさが、観ているこちらの体にも染み込んでくる。連続だとこんな感じ(画像小さくてすみません)。

3枚

ふー…美しい…! 

沢田さんの“雨”、裕二さんの“夕焼け”、龍昇さんの“独り”。三者三様の舞台模様を、連続で観られた贅沢さ。
平日だったため、客席は20人足らずだった。「行きたいー!」と仕事中の友人たちも言っていたように、用事で来られなかった方も多いと思う。それから、私もTwitterで親切な告知を見つけられなければ、この豪華スリーコラボを知らなかったので、気づかずじまいだった人も多いのでは…💦 なので来れなかった人に雰囲気だけでも感じ取っていただければ…と思い、書きました。

演者の皆様、忘れがたい一日を、ありがとうございました!

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