劇団京弥 -一番美しいもの-


2012.11月のとある日@川越湯遊ランド
個人舞踊 白富士健太副座長(曲は不明)


写真・白富士健太副座長(当日の舞踊ショーより)


初めて観たこの劇団の副座長さんは、はんなりした優しさの滲み出る方だった。
女形で色っぽい、とか可愛い、とかきれい、っていう人はごまんといるけど、
「優しい」っていう印象の人はちょっと珍しいかも。

後ろの方にいたパーカを着た男性客が、一万円札を握りしめて立ち上がった。
あ、お花出されるんだと気づいて見ていた。
川越湯宴ランドの大衆演劇場・小江戸座の席は、後方と前方の間に一本通路があります。
そして後方座席と通路の間には、けっこうな段差があります。

男性客は健太さんの舞踊を真剣にご覧になっていたせいか、段差に気づかず歩み寄ろうとして。
転ばれた。
けっこう大きく。
すぐ傍にいたスタッフさんが助け起こしたけど、突然転んだ衝撃が大きかったのか、なかなか立ち上がれない。
その間ずっと副座長さんは、花道の端で踊っていた。
少し心配そうに見ながら。
男性客が立たれるのを待ってるんだと気づいた。

ようやく立ち上がれた男性客は、副座長さんの前に行って。
まず、サッと帽子を取った。
深々と頭を下げた。
お花を帯に付ける。
それから、感極まったように。
そっと控えめなハグをした。
男性客にハグを返す副座長さん。
――客席から拍手が沸いた。
くしゃっと満面の笑みを見せて、男性客は副座長さんに再び深く深く頭を下げた。

なんだか、胸がいっぱいになってしまった。
男性客の一連の動作から、愛情が零れ出ていて。
この白富士健太さんが本当に本当にお好きなんだということが、痛いくらいに伝わってきて。

帽子を取るのは敬意の表れ。
深いお辞儀は感謝の表れ。
その美しさを敬い、その芸を敬い、その人柄を敬い、
好きな役者さんへの思いは尽きることがない。
本当に好きです、尊敬してます、どうかいつまでも輝いていてください。

男性客からの一万円札を付けて、副座長さんは、それはもう輝きの限りを見せて踊っていた。
優しい眼差しを観客に投げかけながら。
この男性客のおかげで、この日一番美しいものが見られたと思った。
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