劇団美山お芝居「小諸の血しぶき」

2014.10.12 昼の部@篠原演芸場

長らく待ってました、「小諸の血しぶき」!
先月から、劇団美山公式サイトで公演予定をチェックし、時には劇場に電話し…
なぜかというと、これ、私がこだわり続けている芝居、「生首仁義」だからだ。
劇団KAZUMAの「生首仁義」にあぶり出された、人間の宿命とかすかな希望。
それが私を劇場に縫い止め続けている。
(新喜楽座の「信州決風記 小諸の夜嵐」とも同じ)

劇団美山がこのお芝居を持っていると教えてくれたのは、大阪でお会いしたライターさん。
10/12(日)昼の部と教えてくれたのは、Twitterで知り合った大衆演劇ファンの友人。
皆様のおかげで、私は公演日に、篠原演芸場に座っておれました。
ありがとうございます!

まず、噂高い里美こうたさんは、やっぱり名優だった。

里美こうた若座長(当日ミニショーより)


白鷺一家三代目・銀次郎(里美こうた若座長)は、やくざに向かない気弱な青年。
兄の二代目・佐太郎(里美たかし座長)が旅に出ているので、仕方なく一家の看板を背負うハメになっている。
しかし、三代目を披露に行く道中でも、すっかり弱気を起こして。
「おいら行きたくないよ~。仙蔵(里美裕樹さん)、長吉(里美京馬さん)、今回はお前たち二人で行っておくれよ」
などと、お付きに頼る始末。

ぽわんとした三代目は、敵対する横車一家の罠にアッサリ引っかかる。
「横車一家のお竜さん(中村エクボさん)が、初めて手紙に返事をくれたんだ」
浮き浮きと逢引きに出かければ、相手の思うツボ。
銀次郎は、お竜をかどかわそうとした不届き者にされてしまう。
横車大八親分(里美虎次郎さん)は、償いとして、残酷な条件を突きつける。
「白鷺一家の縄張りを寄こすか、そうでなければ、三代目の首を寄こすんだ」

こんなに可愛い子に首を寄こせだなんて…
こうたさんは、ふわふわした甘え声で、(多分かなり意識的に)とてとて…と子供っぽい歩き方をする。
白い大きな羽織に、ポンと包まれて。
「それじゃ仙蔵、先に帰ってるからね、早く帰って来ておくれね」
呑気な笑顔には、18歳というこうたさんの実年齢よりも、はるかに幼さが醸し出される。

たかし座長の二代目のセリフで、
「銀次郎、お前だけは、いつまでもやくざというより、どこかの大店のボンボンみてえだな」とあったり。
京馬さんの長吉のセリフ(というかおそらくアドリブ)で、
「子供なんだか大人なんだか、わからねえナリしやがって」とあったり。

良くも悪くも、子供のまま育ったような三代目なのだ。
その彼が、芝居後半では、望みを絶たれて、自らの手で腹を掻き切る。

場は、二代目と三代目の二人きり。
二代目は、宣告するように匕首を渡す。
「俺は、お前のために縄張りを捨てる気はない。義理と人情を秤にかけりゃ、義理が重てぇのが俺たちの渡世だ」
兄ちゃん、と信じられない様子の三代目に、二代目は背を向ける。
「死ね。あとは、お前一人で勝手にしろ」

独り、打ち捨てられて。
白い羽織の三代目は、怯えきった目で床の匕首を見る。
お付きの仙蔵と長吉は、兄に外に出され、助けの手は来ない。
その兄は、死ねと言った。
無音。
ぎいぎいネジを締めあげるように、三代目の目つきが変わっていく。
「死んで―やらあ…」
甘やかだった瞳は、昏いところを覗きこみ、もう光は差さない。
こうたさんから発せられる空気が、禍禍しいまでに歪んでいく様に、身震いした。

仙蔵と長吉が帰って来て、三代目の亡骸と対面する場面もまた、情が深かった。
裕樹さんの仙蔵の押し殺した涙、京馬さんの長吉の迸る悲しみ、どちらも。

里美裕樹さん(当日舞踊ショーより)


里美京馬さん(当日ミニショーより)


裕樹さんの演じた仙蔵には、厚みと愛情があった。
事切れた三代目を抱き起こして、
「なぜ、なぜ若を手にかけなすった!」
と涙ながらに二代目を問い詰める場面は、芝居前半の冷静さとの落差が効いていた。

それから、率直な性格の長吉。
芝居前半は、三代目の情けなさに立腹して、
「一家のために死んでください」とか、ズケズケ言っていたけれど。
死んだ三代目の首を切るため、仙蔵に「若を連れて行こう」と言われた時、反射的に言い返す。
「俺ぁ嫌だよ!」
京馬さんの泣き声、胸を抉った(これが一番私の涙線に来た)。
やくざ仁義を押しのけて、等身大の、長吉という青年の心の叫びが飛び出してきた。
“義理を選び取るべき心が、どうしようもなく情けの側に押し出されてしまう”あり様が、舞台に開かれていた。

一番好きな芝居を、これで3劇団見たことになる。
死んでいく「白鷺一家の三代目」の影を、追っているような気分だ。
最期に意志を放つ柚姫将さん(劇団KAZUMA)兄の愛情にもたれて目を閉じる大和歩夢さん(新喜楽座)、そして絶望と哀憐を描く里美こうたさん…

いずれも匕首を手に、動かしがたい運命と対峙する姿が、私の奥底を震動させる。
このお芝居を自分の中に積み重ねていけば、何かを見つけられるだろうか。

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