【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之拾六]舞台を照らして26年―劇団炎舞の照明・橘みつおさんの話

役者さん以外にも、芸の人はいる。
照明さん。音響さん。大道具さん。棟梁さん。
表舞台に出ない、でもなくてはならない技術の人々。
裏方として大衆演劇を支える方のお話を、前から聞きたくってたまらなかった。

…実現しました!
勇気を出してよかった!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之拾六]舞台を照らして26年―劇団炎舞の照明・橘みつおさんの話

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「俺の話で大丈夫かな…」

と照れながらも、インタビューに応じてくれた。橘みつおさん。十条・篠原演芸場で公演中の人気劇団、「劇団炎舞」の照明を務めている。この6-7月の劇団炎舞の東京公演。周囲の観劇仲間やTwitterを通して聞こえてくる評判は、役者さんの魅力や芝居の内容だけに留まらない。
「照明がすごい!ただ明るいんじゃなくて、影の美しさがちゃんとあるの」
「曲に合わせて、光の感じが全然違う!」
照明に感嘆する声がタイムラインに溢れた。

大衆演劇の舞台はいずれも、表舞台に出ない裏方さんによって支えられている。その直接の言葉を聞いてみたい。「ぜひお話を!」とみつおさんにお願いしたところ、7/3(日)夜の部終演後の篠原演芸場にて時間をいただくことができた。劇団炎舞をよく観ている友人一人と一緒に、筆者は演芸場二階のロビーでみつおさんと向かい合った。


⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

6月からの炎舞の東京公演。
「みつおさんの照明に感服」
「舞台に残された傘に照明。みつおさんの技巧!」
炎舞ファンの多い友人たちから、劇団炎舞の橘みつおさんへの称賛をよく聞くようになった。
舞台をギラギラ照らすのではなく、影のとろける美しさを残す照明。

「みつおさんにインタビューをさせていただけませんか?」
劇団との間に入って下さっている方に、この連絡をしたときは緊張しました。
座長さんをはじめ役者さんは、インタビューなんて慣れきっている。機会が多いからこそ、何の肩書きもない素人がお話を聞かせてください!と申し込んでも、アッサリいいよ~と言って下さるけど。
照明さんだし、困ってしまわれたらどうしよう。
だから、快諾いただいた、と聞いたときは本当に嬉しかった。

インタビューにしょっちゅう同行してくれる友人と、今回も一緒だった。
インタビュー後、記事に使って~と、いつ・どこで撮ったかまで詳細に示した「みつおさんの技」写真集を送って来てくれた彼女のおかげ!

この記事が出てすぐ。
ずっと炎舞を支えてきた方から言葉をいただいた。
『ありがとう』
自分の中で宝物のような言葉になりました。文を書いてきてよかった、と思いました。

インタビュー当日、目を見張った光景がある。
お昼の部のラストショーは『風雪流れ旅』だった。
この日はみつおさんが照明をしているところがよく見えるよう、篠原の二階席に座っていた。
二階席から見下ろした、薄暗い青と雪の風景。

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舞台の床に映っている、彼らの身体。
まるで湖面に立つようだ。
まるで薄氷を踏むようだ。

光を作り出す人は、影も作り出す。
右のほうの照明席では、みつおさんが迅速に機械を操作していた。

ショー終了後には大きな拍手が沸き、私もできる限り懸命に手を打った。
炎鷹座長へ。役者の皆さんへ。そして立ちっぱなしの照明席で、疲れた足をようやく休めているその人へ。

照明さん。音響さん。大道具さん。棟梁さん。
観客席からのたくさんの拍手が、裏にいる彼らの耳にも響きますように。

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【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之拾五]・木馬館が沸騰中!橘炎鷹座長インタビュー!

木馬館が、元気ですね!
先日の大雨の平日も昼は大入りになったとか。
大衆演劇のメッカ・関西へ遠征するのも、すごく楽しいけれど(今年入ってから毎月関西行ってる人w)。
やっぱり東京の劇場に「通える」楽しみは格別です。

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之拾五]前編・浅草が沸騰中!劇団炎舞、すべてを注ぐ東京公演

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ぬっ、と。江戸時代から抜け出てきたような身のこなし、。
「悪い人でも舅は親…」(『夏祭浪花鑑』)
ストーン!と演者の腹の底から観客の体を通り、天井まで突き抜ける声。
「あの人何、なんであんなに上手いの…?!」
橘炎鷹(たちばな・えんおう)座長を初めて観た筆者の友人は、舞台に釘付けのままつぶやいた。3歳から舞台に立ち、名子役・若手として知られ、現在37歳。大衆演劇の座長さんはいずれも芸達者だが、炎鷹座長の古典的な芝居の巧さ・舞台での形の美しさは抜きんでている。


⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

記事中では6/4(土)「炎鷹まつり」の様子をレポしています。ここで観た『花道一人旅』は、私の2016年ベスト舞踊に入ることは間違いない。

そしてそして!
木馬館にて、炎鷹座長にインタビューをさせていただいています。
こだわりだという「役になりきること」について、いっぱい話してくださいました!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之拾五]後編・「役の者と書いて役者」橘炎鷹座長インタビューin浅草木馬館


とにかく笑顔の多い炎鷹さん。なんともキュート!

――雑誌のインタビューで、“辛いときは役につまずくとき”っていう答えをされてたと思うんですけど…

炎 うん、あるある。

――役につまずくっていうのは、どうやってもうまくいかないという状態でしょうか。

炎 その役に対しての、扉が開かん。そこに答えがあるんやけど、答えっていうか役があるんやけど、そこになかなか辿り着かない。たとえば顔、声、仕草…そんなんが腑に落ちない。なんで、舞台で演じると気持ち悪いし…

――そういうお役って今もあります?

炎 あるよ。だからめったにせん(笑) 俺、二枚目が苦手なん。たとえば梅川忠兵衛の忠兵衛とか。ああいうもたれ系の二枚目は…

――白塗りの優男みたいな感じでしょうか。たしかにあまりイメージにないですね。

炎 そう。どっちかっていうと敵役のほうが好きなん。

――でも今座長になられて、敵役ってほぼないですよね。

炎 うん、何本かしかないね。だからその何本かは、もう、超楽しい!

一同 (大笑)

⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

今回は(というか今回も)色んな方の助けを得てのこと。
まず、インタビューをご快諾いただいたファンクラブ運営の方。
私のtwitterを見て、もしかして『血染めのまとい』の写真が必要ですか?と声をかけてくれたお気遣いに心から感謝。
大衆演劇を通してじゃなきゃ出会えなかった、素敵なご縁の一つです(*^-^*)
今後とも仲良くしてやってくださいませ!そしてたくさん、勉強させてくださいませ~。

そしてインタビューに同行してくれた友人たち。
2人のおかげで緊張は普段の十分の一くらいになりました(笑)
記事中では読んでいただく方に読みやすいよう、質問者を区別していませんが、実際は3人が代わる代わる聞いています。
『血染めのまとい』についてのアツい質問は、この世で間違いなく最も『血染め~』を詳らかに観ているファンの友人によるもの。
パンツについての質問には、炎鷹さんパンツをこよなく愛する友人によるものも。

炎鷹さんは、非常に語り口が優しいのが印象的でした!
録音したインタビューを書き起こしていると。
私たちが質問している間にも、炎鷹さんが絶えず「うん、うん」と相槌を打って下さっている声が挟まっていた。

ご自分が話されるときも、非常にゆっくりと。
しかも私たちにわかりやすいよう、「たとえば子分がおって、親分がおって」などと具体的に噛み砕いた話をしてくれました。
友人の一人が勢いよく「はいっ」と挙手すると、苦笑しながら「はい(笑)」と指してくれる炎鷹さん。
なんだか、先生と生徒たちのようです!

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劇団炎舞お芝居「次郎長外伝: 血槍富士」

2013.6.2 昼の部@川越温泉湯遊ランド

一頭の鷹に出逢った。
その人の瞳がぐり、ぐりっ!と光れば、観客席の左にも中央にも右にも、既に狩りが仕掛けられている。

写真・橘炎鷹座長(当日舞踊ショーより)


初めてお目にかかる劇団炎舞座長・橘炎鷹さんの第一印象は、名は性を裏切らないなぁと思わせるに十分。
舞踊ショーの最初の一曲が終わった時点で、少しばかり観客席の盛り上がりが足りないようだと感じられたのか。
(確かに手拍子の音はささやかだった)
「ちょっとすいません」
2曲目が始まる前に、黒幕がひらりと割れ、炎鷹座長が登場した。

「どうも、座長です」
「なんだかお客さんのお元気がないようなんで、見に来ちゃいましたー」
突然現れた座長の姿に、観客席は楽しげにざわつきだした。
炎鷹座長の大きな大きな眼が、きらきらしくライトに照り映える。
「皆さん、元気ですかー?!」
盛り上げるためにわざわざ出てきた心意気に応えるべく、観客席からははーい!とこれまでで一番大きな声。
「なんだ、皆さんやればできるじゃないですか!最初からやってくださいよ!」
わあ、弾けるような破顔一笑!
その笑顔は、原色の明るさ。
溢れんばかりのパワーごと、剥き身で舞台から放たれる。

私の席の近くだったご夫婦は、互いの肘をつつき合いながら、笑い混じりの「なんか、面白いね、あの人」。
なんとなく散逸していた観客席の眼差しが、舞台に収束していく。
「じゃ、この後もお楽しみください!」
炎鷹座長は、固くなっていた会場の空気をぱりぱりと解凍してから、また黒幕の向こうに消えていった。

その後の演目では、途切れることのない拍手・手拍子が、親しげな熱をこめて舞台に送られていた。
私自身も、ポッと温かくなった胸を抱えながら、うきうき手拍子。
カリスマティックな手腕で場の空気を染め変えたその人は、うってかわってモダンな可愛い女形で踊っていた。

そんな舞踊ショーが印象的だったけど。
お芝居でも、炎鷹座長のしなやかな技巧が垣間見えた。

「次郎長外伝: 血槍富士」は、ほんの些細な過ちのために、命を絶たなくてはいけなくなる男の悲劇。
過ちとは、清水次郎長一家の三下・吉松(橘炎鷹さん)が犯した宿間違いだ。
旅の道中、吉松は一家の大事な槍を預かり、兄貴分たちを追っていた。
宿の外に掛けられた黒い笠を、兄貴分のものだと思い、喜色を浮かべて宿に駆け込む。
ところが居たのは、但馬の五平(橘進一さん)の一家だった。
「てめぇ、宿間違いの挙句に槍を持ったまま上がりこむとは…」
五平は苛立ちに任せて、槍を取り上げる。
「どうか、その槍だけは、その槍だけは返してください、この通りです」
地に伏して嘆願する吉松に、五平は残酷な提案をする。

「槍を返してほしくば、詫びとしてお前の首を差し出せ」。

槍か首か。
仁義か命か。
気性の優しい男の運命が、突如として冷たく切り刻まれることになる。

このお芝居は、以前別の劇団さんでも観たことがあった(お外題は別だったけど)。
その劇団さんでは、筋はまったく一緒でも次郎長ものではなかった。
<宿間違いをした槍持ちが切腹してその首を差し出す>というモチーフだけが伝播して、劇団ごとに変容しているのかな、なんて勝手に推理するのも面白い。

劇団炎舞版で特筆すべきは、なんと炎鷹座長が吉松と次郎長二役を演じるということ!

吉松を演じるとき舞台に響くのは、気弱さをくるんだ、まあるい声。
「俺もいつか、次郎長親分のように世に名を馳せる男になるんだ」
炎鷹座長の顔に、やくざ稼業は向いていなさそうな慕情が宿る。

私が吉松の演技で白眉だと感じたのは、「槍か首か」という選択を突きつけられた直後の場面だ。
放心状態のまま宿を追い出され、吉松はぼんやりと自分が見誤った笠を見やる。
そして、自分の愚かさを悔いるように、笠をふらりとつつく。
セリフはなく、炎鷹座長は観客席に背を向けている。
けれど揺れる黒い笠が、冷酷な選択に揺れる吉松の心のようで。
途方に暮れた吉松の心情が、炎鷹座長の背中越しに伝わってきた。

吉松は槍を取り戻すため、自決という悲壮な覚悟を決める。
「兄貴、おっかあに、故郷のおっかあに、吉松は立派な男として死んでいったと伝えてください」
兄貴分の大政(橘佑之介さん)に、縋りつくように訴える場面で、物語は悲しみの頂点に達する。

この吉松が死んだ直後から、炎鷹座長が次郎長親分役で再登場するのだ。
「大政、吉松の首を落としてやれ」
「吉松は立派なやくざとして死んだんだ。その心をわかってやれ」
今度は、底にわずかな苦みすらある、精悍な親分の声。
さらに今度は、折れることのない意志を畳み込んだ面差し。
奥行きの深そうな芸の引き出しを、軽々と目の前で開けていただきました。

炎鷹座長以外に印象的だったのは、橘進一さんの五平役。
かなりの悪役ながら、威圧感が大仰でなくさらりとしている。
「この槍か、お前の首か、どちらかだ」
独特の涼しげな目元で、何でもないことのように言う。
五平にとって、これは軽いお遊び。
まさか吉松が思い詰めた挙句、本当に切腹しようとは思わない。

次郎長から吉松の首を受け取ったときは、さすがに色を変えたものの。
「おい、まぁ、待て、待ってくれ」
憤怒に燃える次郎長に、待ったを要請する調子はまだ冷静だ。
他人の命を扱うのにどこか本気でない、そんな軽みのある悪役が、いかにも熟練の味だった。

さて口上によれば、劇団炎舞さんは秋頃まで東京にいてくださるらしく。
鮮やかな原色の鷹に、再びお目にかかることができそうです。