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嬉しかったお仕事:大衆演劇にハマる理由~旅役者の魅力にとりつかれて

こんばんは!
最近お仕事で書かせていただいた中で、とても考えさせられたものがありました。

https://www.tv-asahi.co.jp/ch/ex_maniacs/post-530/
大衆演劇にハマる理由~旅役者の魅力にとりつかれて

(2019/4/17)

EXまにあっくす画面_400
「EXまにあっくすweb」画面

2016年の大衆演劇番組開始以来、3年間、お世話になっているCSテレ朝チャンネルさん。番組で扱うさまざまなコンテンツを紹介する、「EXまにあっくすweb」というサイトを運営されています。記事のテーマは色々で、お笑いやフィギュアスケート、小劇場など興味深い記事が並びます。
そこで大衆演劇の魅力を語る、という記事を書かせていただきました。

書きながら、自分自身考えました。どうして大衆演劇にこんなに捉われっぱなしなのだろう。このブログを始めて7年、その間に人生がひっくり返ってしまうほど…。
その結果、お仕事だから!と気張らず、自分の素直な心が文章ににじんだような気がしています。

ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

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【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之三十五] 気になりすぎて!舞踊の名手・つばさ準之助座長に新潟でロングインタビュー

※こちらの記事、リリース直後からファンの方に拡散していただいたおかげで、3/24付SPICE人気記事ランキング・デイリー1位👑という信じられない順位に…😲4年間の連載の中で初めてのことでした。準之助さんファンの熱さを実感しました!

大阪を中心に、今やゲストで大人気のつばさ準之助座長。
私の初見は昨年8月の九条笑楽座での「準之助祭り」だった。準之助さんファンでごった返した客席の熱気に、へぇ~すごい人気なんだなぁ~と思わされた。
――そしてミニショーでの3曲を観終えたあと、自分もしっかり恋に落ちていたのだ。
人の手足ってこんな風に動くんだ。しなやか。なめらか。速い。
何より印象的だったのは、ふんわり包み込むような優しい微笑み。これぞアガペー!

それにしても準之助さんは、気づいたら急にフィーバーが起きていた印象だ。数年前から劇団つばさの名前を見かけるようになり、舞踊がすごく上手いよと聞き、ブログ・SNSでも名前を見るようになり、友人たちからも高評価を聞くようになり…。

何者、なんだろう。たった3曲で心をつかむ役者さん。
ということで3/2(土)-3/3(日)、友人2人と共に夜行バスに乗り、劇団つばさ単独公演が行われていた新潟へ飛んできました!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之三十五] 気になりすぎて!舞踊の名手・つばさ準之助座長に新潟でロングインタビュー



準之助さんを前に、友人2人+私で風鈴屋のロビーのソファーに腰かけて、3人が代わる代わるたくさん聞いた。
5歳から舞踊劇団で「プロ」として生きてきたこと、舞台をやめようとするたびに誰かに引き戻されてきたこと、舞踊という表現のこと、昨年ケガをされた靭帯のこと、劇団つばさの将来のこと、そして準之助さん自身のこれから。
「俺、なかなか濃い人生送ってるでしょ?」
つい長くなってしまった取材の間、ずっと笑い絶やさず喋ってくださった。

⇒インタビュー全文はこちら

これから関東でのお仕事も増える、という言葉に東京住みとしては歓喜\(^o^)/
客席に注ぐ優しいまなざしは、苦労されてきたからこそなのかもしれない。

インタビューの中で、準之助さんが「引退」に言及された箇所がある。友人の一人が長く観ていたい!という気持ちのあまり、「10年後とか…」と口走ると、「10年はさすがに無理やわ~!」と大笑いされた。

今年で43歳。きっと元気でいてくださいね。お体を大切にお休みも取りながら、でもきっと舞台にいてくださいね。

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準之助さんは3/28(木)に此花演劇館の満劇団、4/10(水)~4/20(土)に此花演劇館の劇団紫吹へゲスト出演予定です!
つばさ準之助座長Twitter⇒@jun19760628

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劇団天華お芝居『三浦屋孫次郎』がハンパなく最高だった話

2019.2.10昼@京橋羅い舞座

※定番お外題なので筋は最後までネタバレしています。
※普段よりテンション5割増しなので、「うるせぇ」って思った人は途中で閉じてください。すいません。


幸福って…こういうことなのね…。
↑2月10日の京橋羅い舞座の一客の胸中

お芝居を通してしか出会えない人間の顔つきに出会った。
そこにある演者の魅力を再発見した。
そんなことが叶う観劇は、年に数回あるかないか!やったぜ!

この日の『三浦屋孫次郎』が心を打った理由は、孫次郎と富五郎という対照的な二人が、大粒でぶつかり合っていたことだった。


三浦屋孫次郎役・澤村千夜座長

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勢力富五郎役・澤村悠介花形

劇団天華の『三浦屋孫次郎』は、孫次郎を任侠のヒーローとして描かない。不運な転落に人生を吸い取られ、両親は自死、やむを得ずにやくざになったものの渡世に馴染み切れないという役だ。
(初見は2016年1月の京橋羅い舞座。そのときの衝撃を書いたブログ)

今まであんまり気付かなかったんだけど、千夜さん孫次郎が「すごく強いわけじゃない」ってこと、冒頭で示されてたんだ!孫次郎が一宿一飯の恩義を断り切れず、笹川繁蔵(悠介花形・二役)の命を頂戴すべく喧嘩を仕掛ける場面。
ここの立ち回り、明らかに孫次郎のほうが劣勢なのだ。孫次郎が何度も転がされて尻もちをつくのに対し、繁蔵は一歩も動かないであしらっている。
孫次郎が勝てたのは本当に偶然で、だからこのお話は「三下の旅人がまさか笹川繁蔵の首を取れてしまった」ばかりに起きた悲劇だってことが浮き彫りになってくる。

そして悲劇のど真ん中に突き落とされた孫次郎は、実はずっと“自分の死”を願っている人なんだ…。
そのことを2箇所のシーンに見て、切なくなった。
一つ目は、笹川一家との喧嘩の直前、昇天の徳次郎(澤村丞弥副座長)が孫次郎に「今夜の月が、きっとお前を親様の下へきっと導いてくれるであろう」と言うシーン。つまりもう確実にお前は死ぬぞ、って宣言である。
けれど孫次郎は、その言葉で初めて心を開いた笑顔になって、「へい!」と返す。
このあたりから終盤にかけて、孫次郎の心はもはや現世にない。目線は遠くなり、心は二親の待つ彼岸のほうへ、どんどん抜け出していく。

そしてもう一つは、笹川一家に斬られ刺され、ズタボロになった孫次郎が絶命する直前のシーン。地を這い、動かない手をズルズル引きずって数珠を握る。
そのときの笑顔は言葉にしがたい。
千切れていく。
千切れていく、この世から。望み通りに。

劇中で孫次郎が笑顔を見せるのは、この2回のみ。彼が望んだものは“死”だけだった。
生きているうちから、幽霊みたいな生き方だった。それしかなかった。
それは客席で物語を受け取る側からしても、ぞっとする悲しさで、死に様にはぼろぼろ涙が零れた。

…で、ここまでなら千夜さん讃で終わるんですよ。
けど今回言及したいのは、孫次郎と超好対照な悠介さんの富五郎が輝いていたこと!

勢力富五郎は笹川一家の代貸し。親分を殺されたことに怒り狂って、孫次郎を討つ役だ。
劇団天華の『三浦屋孫次郎』に2年当たっていなかったので、悠介さんの富五郎は初めて観たのだけど。
「姐さん、たでぇま帰(けえ)ってめぇりやした」
と、花道をのしのし歩いて登場した瞬間から、生命力にぶっ飛ばされた。富五郎という役をオンすることで、悠介さんの恰幅の良さや太い声質が全部、ゴージャスに生きてくる。全国に名をとどろかせる笹川一家の代貸しにふさわしい、圧倒的なパワーがあるのだ。

それが特に顕著になっていたのが、笹川一家に孫次郎が単身で乗り込んでくるシーン。
左から清滝佐吉(龍聖さん)、羽斗勇吉(悠夜さん)、夏目新助(竜華さん)、孫次郎、繁蔵の女房(志保さん)の順で並んでいて一番右端に富五郎がいる。
この6人の中で富五郎が「一番格上である」ことへの説得力がズバ抜けていた。大きな体躯、堂々とした態度、足を組んで孫次郎をにらむ剣呑な目つき、どっしりと色濃かった。

生命力の富五郎と、生きながら“死”を一心に見つめている孫次郎。両者の心は根本的に噛み合うことがない。
片方は親分の仇を見る。片方は幸福な死ばかりを見る。
片方は渡世をどっぷり生き切ってきた。片方は渡世からはじき出された。

孫次郎の死後、富五郎は孫次郎を悼むけど。
「親の仇のお前に頭下げて詫びを入れることはできねえが、お前は立派な男だと、頭下げて礼を言うぜ」
賛辞は、うつ伏せに倒れて死んでいる男の上を通り過ぎていくようにも思えた。渡世という物差しの言葉が、「おっかさん」と叫んで壮絶に死んだ孫次郎にとって、どれだけの価値を持っていたんだろう…。

あと個人的にツボだったのは、笹川一家の場面の座布団の使い方。
孫次郎はだいぶためらってから、
「あの、姐さん。親分に手を合わせてもよろしゅうござんすか」
と言い、位牌の前にあった座布団を横によけて手を合わせる。首を取った自分が座っていい場所じゃないという気持ちが、ふっと現れていた。

――その後の場面で富五郎がどっかりとその座布団に腰を下ろしてしまうの、めっっちゃ“お芝居”じゃないですか???(拳を握りながら)
座布団の使い方一つに、その場における二人の立場・生き方がシンボリックに現れちゃうの、すっっっごい…こう…“お芝居”じゃないですか!!!(2回目)

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千夜座長×悠介花形 相舞踊2/10

セリフを足す。所作を書き込む。師弟なだけあって、細かなお芝居の感じも似ているお二人。このペアによって更新される物語を、今後も渇望しています!

テンションが飛び上がってる記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました☕

【劇団天華 今後の公演先】
3月 三吉演芸場(神奈川県)
4月 大江戸温泉物語 ホテルニュー塩原(栃木県)
5月 大江戸温泉物語あわら(福井県)
6月 八尾グランドホテル(大阪府)
7月 高槻千鳥劇場(大阪府)
8・9月 大江戸温泉物語ながやま(石川県)

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新作を待ちながら ―役というときめき!―

“新作芝居”。
これくらい心ときめく4文字があるだろうか、いやない(私調べ)。
口上で「今月は〇日に新しいお芝居をやります」と言われれば、心にぱぁっと咲いた花を持ち帰るような気持ち。
貼り出されたお外題でも、「新作」の文字はきらめいて見える。
だって、あなたの新しい役が観られる!!

大衆演劇の興行を考えればワガママな希望だとは思う。休みのないスケジュールに加えて、道具や人数にはめちゃ制限がある。そこで生きる人々に対して、新しい演目が観たいというのは。
けれどやっぱり新作が観たいんです。うずうずするほど。
なぜかって言うと、そこに“役”という、ものすごいきらめきがあるから。

スカッと心晴れるような二枚目もいい。すっとんきょうな大工もいい。落ち着いた親方や主人もいい。女形芝居は極上。目つきの怖い悪役なんか最高だ。
好きな演者が技と心と、その人にしかないちょっとした癖を持って、新しい役になろうとする。観たことのない人物が心に入ってくる。初めまして!
そんなときは舞台を穴の開くほど見つめ、物語の進行をどきどき追っている。終演したら、余韻をしっかり噛みしめる。味わう。すでに再演への期待を抱いているときもある。

そして余韻が抜ける頃、帰りの電車の中で、頭には問いかけたいことがいっぱい浮かんでくるのだ。
どうやって役を作っていったのですか。
演じてみて、その役はどんな味でしたか。
思っていたのより濃い味でしたか、それとも意外とアッサリしていましたか。

(短い取材経験の中から何かを言うのは憚られるけど、これは本当にしょっちゅう感じることなので書いてもいいと思う)
これまでの『KANGEKI』やSPICEのインタビュー取材の後、「ありがとうございました」とこちらが切り上げても、役者さんがぽつぽつとお芝居の話を続けてくれることがあった。

「今日の芝居はここにシーンを足して、見せ方を変えてもアリだと思うんです」
「こういう新しいお芝居をやりたいんだよね。ずっと考えてて」


話しやすい方も人見知りな方も、気さくな方もちょっと強面な方も、色々な役者さんがいるけれど。
今日が何月何日かは忘れてても、2年前に演じた芝居の役のセリフは鮮明に覚えている。彼らはそういう人種なのかも、と感じる。
だからこそ。
人数・道具・セットが揃わないという理由で表現手段をあきらめるときの、その思いは測りがたい。

「仕掛けやセットが使えたら、やりたい芝居はたくさんあるよ」
「いつかやりたいとは思ってますが、あんな人数の多い芝居はねえ…」


やりたい役はあっても。
役を見せるためのツールが、絶対的に足りない。
それはたとえば絵描きが、絵の具の数が不足したまま、キャンバスに向かわなきゃいけないようなものだろうか…。

その環境下でも、絵筆を握っている人たちがいる。
1月に関東で拝見した20代の座長さんお2人は、どちらも新作を作り続けている方だった。

劇団新(あらた) 龍新(りゅうあらた)座長


まずクリエイターといえば新さん!劇場公演では必ず新作をやってくれるだろう、という確信のある役者さんだ。
1月は川崎・大島劇場だったので友人たちと足を運んだ。1/13、妹の小龍優さん誕生日公演に新さんが書き下ろした新作『貝殻節は別れ唄』では、生き生きしたキャラクターが跳ね回っていた。

新さんの作るお芝居に独特だなぁと思うのは、シネマ的な“映像”でお話が進んでいくこと。たとえば、舞台にいるのは長ゼリフを喋っている一人だけと思わせて、セリフの最後にライトがつくと、実はそこにもう一人いたり。敵味方がにらみ合ったと思ったら、後ろの黒幕がサッと引かれ、物語が次の時間軸に移ったり。
映像の力で役を支える、若き座長。この5月は大阪・池田呉服座に挑まれるそうだ。


劇団美松(みまつ) 松川小祐司(まつかわこゆうじ)座長
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そしていま一人、関東の飛ぶ鳥落とす勢いの小祐司さん。昇っていこうとする、らんらんとした目の強さが胸に残る。
1月はつくばYOUワールドでの公演で、1/19の小祐司さんお誕生日公演は昼夜外題替えだった。どちらも新作の『女殺し油地獄』(昼)『金色夜叉』(夜)。
『女殺し~』では与兵衛の心が空っぽな様を、くてんと体を預けるような気だるい歩き方に表し、一方『金色夜叉』の寛一はきれいな顔を失望に濡らして、「今月今夜を忘れるものか」と叫んでいた。このお芝居を作るとき、多分ここを演じたかったのじゃないかな~などと制作過程を想像させられた。

小祐司さんは台本を書くのと同時進行で、劇団メンバーに役を割り当て、実演向けに調整もするというやり方なんだそうだ。演じることと作ることがセットになっていて、それが新しいことを打ち出せるスピード感に繋がっているのかも、と想像する。
観逃している『滝の白糸』、2019年こそ観られるといいな。

関西でも九州でも東北でも、たくさんの人が。
足りない中でありったけの物をかき集めて、新しい役を打ち出そうとしてくれている。
本当はもっと人が多い場面も作りたい、もっと広い舞台だったらこんな風に――作品に収まりきらなかった思いも多々あるんだろう。

こぼれ落ちたもののことを客席で考えながら。
それでもかけがえのないその人の、新しい役を心待ちにしている。あなたはまだどんな人物になれるのだろう。心はどこまで膨らんで、どこまで連れて行ってくださるだろう。

新作芝居が一本かかるとき、それを舞台に乗せるまでに費やされた時間と、たくさんの人の手を思う。
そして心の中に沸き上がってくる。
まだ見ぬ役への“初めまして!”と。
描き続けるその手を、なんとかして労わることはできないだろうかと思う気持ちが。

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2018年お芝居マイベスト ―役を手渡す―

毎年振り返ってるベスト芝居、これを書いてると大晦日だな~という気持ちになります(つまり毎年滑り込み)。今年の忘れがたいお芝居は6本!

★筑紫桃太郎一座 花の三兄弟『月夜に泣いた一文銭』
2018.2.9 夜の部@新開地劇場


「なぁ、あんちゃん、そんなむつかしい話はわからねぇよ」
頭の弱い子に対して、こんなに心の深い、やさしい言葉があるだろうか。牙次郎(博多家桃太郎弟座長)のいま一つ要領を得ない話を聞いて、正太郎(玄海花道花形)がゆっくりと返した言葉。
「百両が手元にあったなら――金がなぁ、お前を利口に見せてくれるだろう…」
定番のお芝居ながら、その底に流れている正太郎の尽きることない愛情を初めて見る思いがした。

大きな体を丸めて拗ねるかと思えば全身で喜ぶ、ピュアネスの固まりみたいな博多家さん牙次郎と、ひたすら優しい花道さん正太郎(また声が抜群にいい)。レアな配役で、特に花道さんは初役だったそう。ものすごく緊張したらしく、「休憩中にもずっとセリフを繰っていた」と口上で話されていた。このペアならではの澄み通った『一文銭』だった。


親方・筑紫桃之助座長

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牙次郎・博多家桃太郎弟座長

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正太郎・玄海花道花形

しかし花の三兄弟は楽しい。お人形みたいな美貌の長男、ずば抜けた技巧と力強さの次男、天衣無縫な末っ子三男。友人たちやTwitterの相互フォロワーさんにも三兄弟ファンが多く、2019年の躍進がとにかく楽しみ!

観たときの感想⇒筑紫桃太郎一座 花の三兄弟お芝居『月夜に泣いた一文銭』 ―優しい言葉と百両首―

★橘劇団『ウェイターの花道』
2018.5.5 @浅草木馬館


「シリアスな外題が出るとテンション上がるのは喜劇が嫌いなんじゃなく、喜劇だとどうしても内輪ネタとかグダグダになりがちだからで…素晴らしい喜劇は素晴らしいよ!」
昔、芝居を愛する友人が言っていた一言には、いつでも深く共感する。
毎年、自分のベスト芝居を振り返ると、5~7本の中に一本くらいは喜劇が入っている。シリアスな芝居の好きな場面をあとから思い出しても沁みるように、喜劇の好きな場面は何度思い出しても笑える!

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ウェイター・橘大五郎座長

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レストラン店長・かつき夢二座長

大五郎さん演じる元役者のウェイターは、レストランで給仕していても芝居から頭が離れない。絡んできたタチの悪いお客に「知らざあ言って聞かせやしょう」と名乗ったり、お客さんをお手洗いに連れて行くのに飛び六方で連れて行ったり…。極めつけはメニュー作り。「とれとれ野菜サラダ八百屋お七」には大笑いした😂
そしてその破天荒な行動を絶賛する、大の芝居好きのレストラン店長(かつき夢二座長)がまたおかしい。
足をじたじたさせて「く~っ、芝居好きにはたまらん~!」を連発し、テンションがMAXになったときには「ちょっと写メ撮ろ!」と素早い手つきで二人で自撮り写メを撮る(笑)
お芝居大好き、が溢れかえった大五郎さん&夢二さんの会話劇だった。

『ウェイターの花道』はゴールデンウイーク特別一日三回公演のうちの二回目だった。びっくりするくらい公演数を打ち、演目を作り続けている大五郎さん。くれぐれもお体大切に、楽しい30代を過ごしてほしい。

今年は大五郎さんにSPICEインタビューもさせていただきました⇒大衆演劇の入り口から[其之三十二] 橘大五郎座長が走り続ける“原動力”とは? SPICE独占インタビュー!

★おもちゃ劇団『遠州しぶき』
2018.8.20夜 @梅南座


この6本の中からさらに一本選ぶとなったらこれを推すかもというくらい、胸に食い込んでいる芝居。
おしん(市川恵子太夫元)は、妹・お登勢(市川ななみさん)とともに、遠州灘で生き別れた弟・菊之助(ゲスト澤村千夜座長)を何十年も探している。しかし再会した弟は大盗人・夕霧菊之助になっていた。
一見よくあるお話なのだけど、セリフの一言ひとことに耳を傾けると、こんこんと深い思いが流れている。

「この人、そんなに悪いことしたの?優しそうな顔をしているのに」(菊之助の人相書きを見ながら、お登勢)
「弟が生きて帰ってきてくれたなら…。たとえどんな姿でも生きて帰ってくれさえすれば、両の腕(かいな)でしっかりと抱きしめてやります…」(おしん)
「思い出すなぁ、優しい姉さんと可愛い妹、一緒に行った遠州灘。しずくがかかって、冷てぇなぁ…」(菊之助)

千夜さんの菊之助役の哀しさや、ゲスト・要正大さんの金貸し役のユーモラスさなど見どころも多い。その中でやっぱり芝居の骨格になっていたのは、おしんを演じた恵子先生だった。たたずまいの一つ、表情一つに、失われた時間への無念さが響いていた。

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おしん・市川恵子太夫元

ラストシーン、おしんが菊之助を捕らえた白い縄をぐるぐると巻き戻す。見えない鳥目で虚空を見つめながら、ぐるぐる、ぐるぐる。
姉弟の何十年もの時間が、巻き戻っていくようだ。

「女優・市川恵子は今が旬です」(『KANGEKI』2018年9月号「旅芝居の母たち」)
そう語られていた通りの舞台。2019年も旬の演技を届けてくださるだろう。

当時の感想⇒おもちゃ劇団お芝居『遠州しぶき』 ―巻き戻る時間―

★劇団天華『刺青奇偶』(澤村千夜座長誕生日公演)
2018.9.22昼 @朝日劇場


恋愛を主軸に置いたお芝居と聞くと、個人的には期待の一方で不安も大きい💦
大衆演劇に限らず、映画や小説でも恋愛もののフィクションには素晴らしいものがたくさんあるけど、うぅ、これは~…という作品がラブストーリーである確率も高い。なんでかというと恋愛って一対一の密室空間なので、登場人物が“なぜそうするか”という動機を作り手が説明する責任が薄くなりがちに思うのだ。「この二人の恋愛はそうなんだもん」で、どんな展開も丸められちゃうというか(あくまで個人的な嗜好です)。

けれど天華版『刺青奇偶』が冴え冴えとした余韻を残してくれたのは、“この役はなぜそうするか”を掘り下げ続けた演者の力、脚本の力、そして長谷川伸の原作の力なんだと思う。

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お仲・藤乃かな座長

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半太郎・澤村千夜座長

まずゲスト・藤乃かな座長のお仲。船着き場での出会いの後、半太郎が体も見返りも求めず去っていくと、お仲はああっと叫び出しそうなくらい目をまん丸にして駆け出す。
そのときのかなさんの表情は、少女的な驚きに満ちていた。初めて“人”に出会った!欲望としての“男”じゃなく“人”に!そんな喜びが弾けるよう。花道を駆けていくかなさんの情熱から、お仲が半太郎に人生を捧げる理由がとても腑に落ちた。

そして千夜さん演じる半太郎の根底には、故郷恋しさが一貫して流れている。船着き場では少しでも故郷を感じようと、見えない江戸をじーっと見つめている。お仲の余命がいくばくもないと知った時、半太郎は泣きながら妻の両肩をつかんで叫ぶ。
「二人で一緒に深川へ帰るんだ…!」
深川へ。そこに帰れば幸福が待っているはずの、夢見た故郷へ。
この一言を聞いたとき、これは“ふるさとから切り離された人の物語”なんだということが迫って来て、舞台上の夫婦を見ながら泣いてしまった。

でも、故郷のシンボルともいえるお母さん(蘭竜華さん)とはすれ違い。ふるさとはいつまでも夢でしかない。最後にオリジナルの演出でそのことが強調されていて、突き刺さる『刺青奇偶』だった。

千夜さんの新作芝居を数えてみたら、2018年は5本だったかな?演技者としても演出家としても、ずっと期待の止まない役者さんだ。

★劇団駒三郎『楢山節考 姥捨て山』
2018.11.19夜 @大島劇場


大島劇場に寒村の風景があった。
ごそごそ音を立てるかんじき、蓑、手に息を吹きかける仕草、客人のための最後の一杯のお茶っ葉。「こんなに茶っこがうまかったかや」などのお国言葉のなまりも温かい。
ディテールの細かさという意味で、作りこまれた一本だった。

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シカ・南條小竜太夫元

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与助・南條駒三郎座長

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菊・南條友李愛花形

とりわけ老母シカを演じた、南條小竜太夫元の演技がひたひた静かに沁みてくる。息子の与助(南條駒三郎座長)が役人からもらってきたお定め書きを渡すと、シカはうやうやしく礼をしながら受け取る。それが自分に山ごもりを命じるものだとわかった上で、役人への敬意が体に染みついている村人の在り方を端的に表していた。

母を背負って山へ連れて行く与助の、悲しみを押し殺した様。最後にわぁーんと劇場中に響く、娘・菊(南條友李愛花形)の胸を締め付ける泣き声に、もらい泣きした。自分を慈しんでくれた“かかさま”が、掟によって死なされていく――。

お芝居というより、本当の村の情景を切り取ったような一片。シカが、与助が、菊が、どこかで生きているような気がする。

★春陽座『赤垣源蔵 徳利の別れ』(忠臣蔵withオペラ)
2018.12.16昼 @京橋羅い舞座


オペラと大衆演劇がコラボで忠臣蔵をやるという。なんて面白そうなんだ!行くしかない!といきり立って、日帰り強行軍で大阪へ。オペラの荘厳な音楽と忠臣蔵の骨格の大きさが相まって、楽しい企画だった◎
そして芝居も、ゲスト・近江飛龍座長演じる兄・塩山伊左衛門と、澤村かずま座長演じる弟・赤垣源蔵の二人がはまっていたのだ。

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赤垣源蔵・澤村かずま座長

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塩山伊左衛門・ゲスト近江飛龍座長

飛龍さんもかずまさんも、演技がドーンと大きくて華やか。だからこの二人が兄弟役というのは、芝居のサイズ感的にぴったりだった。
伊左衛門て厳格なイメージだったのだけど、飛龍さんの場合、弟への愛情がいっぱいに溢れている。弟と仲良く囲碁をする場面に始まり、勘当したあとも弟が訪れたと聞けば「会いたかったのう」と悔しがる。そして赤穂浪士の討ち入りの報を聞きつけたときは、市助(ゲスト渡辺裕之さん)に興奮して両腕広げ、
「赤穂浪士の中にわが弟、源蔵がいたときは、そのときはのう、表門から帰って来たその上で『源蔵様はおられました』と隣近所に聞こえるように叫ぶのじゃ!」

一方、討ち入りを果たした源蔵は、晴れ晴れとした顔で友人(澤村心座長)や婚約者(澤村みさとさん)にお礼を言っている。
「ありがとう」「かたじけない」
その穏やかな表情が、背後からの「源蔵!」の一声で堪えきれなくなったようにクシャっと歪む。

声の主は駆けつけた伊左衛門。汗まみれで、ぜーぜーと肩で息をしている。
他の誰との別れにも冷静だった源蔵が、この兄の声には心乱さずにいられない――貴方が一番好きだった。兄が弟を愛するのと同じように、弟もまた兄を一番。
丁寧な芝居の春陽座と、唯一無二のTHEパワー・飛龍さん。異色の組み合わせで生まれた芝居だった。

10月は春陽座両座長にインタビューさせていただきました⇒大衆演劇の入り口から[其之三十四] やさしい和菓子みたいな劇団「春陽座」澤村心×澤村かずまの芝居語り

長々と記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。
2012年夏に大衆演劇にハマって早7年。最近思うのは、お芝居が昔よりもっともっと好きだな…ということです(底なし沼)。演者のセリフ・所作・表情が好きなのはもちろん、長年使われてすり減った道具・背景幕・チョチョンと鳴る柝の音など。芝居を形作るものの色々が、愛しくなるときがあります。
それらはすべて“役”を成り立たせるために存在するもの。この役はどんな風に、役者さんの手から手へ渡されてきたのだろう。誰の気配が残っているのだろう。そんなことを考えながら、2019年もたくさんの役に出会えますように!

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